コラム

マウスピース矯正はサウナで変形する?注意点は?

マウスピース矯正を行っている患者様からは「サウナに入るとマウスピースは変形しますか?」というご質問をいただくことがあります。
近年は健康やリフレッシュ目的でサウナを習慣にしている方も多く、治療中の影響が気になるのは当然です。本コラムでは、サウナとマウスピース矯正の関係、熱による変形の可能性、注意点について歯科医師の立場からわかりやすく解説します。

マウスピース矯正中にサウナへ入ってもいいの?

サウナに入ること自体が直ちに治療を妨げるわけではありません。しかし、マウスピースを装着したまま高温環境に長時間いることには注意が必要です。
マウスピース矯正で使用する装置は、透明な樹脂素材でできています。歯にぴったり合うよう精密に作られており、わずかなゆがみでも適合が変わってしまいます。歯は「少しずつ、持続的な弱い力」によって動くため、装置の形状が変わると計画通りに歯が動かない可能性があります。

一般的なサウナ室の温度は80〜100℃前後になることが多く、岩盤浴でも40〜50℃程度に達します。口の中は体温に近い約36〜37℃ですが、サウナでは体温自体が上昇し、口腔内も通常より高温になります。この状態が長時間続くことで、マウスピースに影響が出る可能性が否定できません。
「絶対に入ってはいけない」というものではありませんが、正しい知識を持ち、装置を守る意識が大切です。

マウスピースは熱に弱い?

マウスピース矯正で使われる素材は、医療用の熱可塑性樹脂(熱で形が変わる性質を持つプラスチック)です。この素材は、一定以上の温度で柔らかくなる特徴があります。そのため日常生活では、熱湯で洗わない、車のダッシュボードに置きっぱなしにしないといった注意が必要と説明されることが多いでしょう。これは、高温にさらされることでマウスピースが変形する可能性があるためです。

サウナ室の温度そのものは非常に高いですが、口の中は唾液や呼吸の影響で極端な温度にはなりにくいと考えられています。ただし、体温上昇や長時間の滞在によって装置がわずかにゆがむ可能性はゼロではありません。

特に注意が必要なのは以下の場合です。

  • 長時間(20分以上)連続して入る
  • 高温サウナを頻繁に利用する
  • マウスピースがやや緩く感じている

このような条件が重なると、装置の適合に影響することがあります。

サウナ・岩盤浴で起こり得るリスク

マウスピースの変形

最も注意したいのは、熱によるマウスピースのわずかな変形です。マウスピース矯正は、歯列にぴったり適合した状態で、持続的に穏やかな力を加えることで歯を動かします。そのため、ほんの少し形がゆがむだけでも、歯に伝わる力の方向や強さが変わってしまう可能性があります。
目に見える大きな変形でなくても、装着時に「以前より入りにくい」「端が浮く感じがする」「歯と装置の間に隙間がある」といった違和感が出ることがあります。これらは適合不良のサインであり、そのまま使用を続けると歯の移動計画に影響を及ぼす恐れがあります。

装着時間の不足

サウナ利用時にマウスピースを外すこと自体は問題ありませんが、その後に再装着を忘れたり、外している時間が長引いたりすると、必要な装着時間を確保できなくなります。
マウスピース矯正では、1日20時間以上の装着が推奨されることが一般的です。これは、歯が元の位置に戻ろうとする力に対抗し、安定した力をかけ続けるためです。装着時間が不足すると、歯の動きが停滞したり、予定より治療期間が延びたりすることがあります。
特にサウナ後に食事や入浴が続く場合は、結果的に長時間外した状態になりやすいため注意が必要です。

脱水による口腔内環境の変化

サウナでは発汗により体内の水分が失われます。水分が不足すると唾液の分泌量も減少し、口腔内が乾燥しやすくなります。
唾液には、歯の表面を洗い流す作用や、虫歯菌の働きを抑える役割があります。そのため、唾液が減った状態でマウスピースを長時間装着していると、細菌が繁殖しやすい環境が生じます。
結果として、虫歯や歯ぐきの炎症リスクが高まる可能性があります。
サウナ利用後は十分な水分補給を行い、口の中の潤いを保つことが大切です。

衛生管理の問題

サウナ施設では、装置の着脱回数が増える傾向があります。その際、専用ケースを使用せずにタオルに包んだり、バッグのポケットに直接入れたりすると、衛生面や紛失のリスクが高まります。
マウスピースは口腔内で使用する医療用装置です。不衛生な環境に置かれると細菌が付着し、再装着時に口腔内トラブルを招く可能性があります。また、透明で小型のため、置き忘れや誤って廃棄してしまうケースも少なくありません。
外した際は必ず洗浄し、専用ケースで清潔に保管することを徹底しましょう。

サウナに入りたい場合に気を付けること

基本は外して入る

高温環境に長時間いる場合は、マウスピースを外してから入ることをおすすめします。その際は必ず専用ケースに入れて保管しましょう。

装着時間を確保する

サウナ利用後はできるだけ早めに再装着し、1日の装着時間を確保することが重要です。習慣的に長時間外すことは避けましょう。

水分補給を十分に行う

脱水を防ぐために、こまめな水分補給を心がけてください。口の中の乾燥を防ぐことは、虫歯や歯ぐきトラブルの予防にもつながります。

違和感があれば早めに相談

再装着時に「入りにくい」「浮く感じがする」などの違和感があれば、自己判断せず歯科医院へご相談ください。無理に装着すると歯や歯ぐきに負担がかかる場合があります。

まとめ

サウナとマウスピース矯正は両立可能ですが、高温環境による変形や装着時間不足には注意が必要です。特に長時間の利用や頻繁なサウナ習慣がある方は、外して入ることを基本とし、装置の管理を徹底しましょう。

違和感や変形が疑われる場合は早めに歯科医院へ相談することが大切です。正しい知識で、大切なマウスピースを守りながら治療を続けていきましょう。

監修者情報

写真:松島 耕平

歯科医師/
きらり歯科クリニック 院長

KOUHEI MATSUSHIMA

経歴
1999年4月
イギリス留学
2015年3月
松本歯科大学 卒業
2016年4月
福岡医科歯科総合病院 研修
2017年4月
北九州市内の開業医 勤務
2018年4月
北九州市内の開業医分院長 就任
2019年11月
きらり歯科クリニック 開院
2025年6月
医療法人喜咲堂に法人化

所属・資格
筒井塾 包括歯科臨床コース修了
筒井塾 咬合療法ベーシックコース修了
日本歯周病学会
日本顎咬合学会
スポーツデンティスト

福岡県福津市にて、患者様が自信を持って笑えるようお口の健康をサポート。矯正治療において豊富な実績を持ち、見た目の美しさだけでなく、骨格や全身のバランスを考慮した「機能美」を追求する治療を強みとする。歯科医師・スタッフ一丸となって患者様の悩みや希望に寄り添う診療を大切にしている。